不安とは、恐怖のように明確な対象を持たない「怖い」という感覚のことを指し、その恐怖に対して自分が対応
できない時に発生する感情の一種です。
不安が強く、行動や心理的障害をもたらす症状を総称して不安障害と呼びます。不安障害はかつて神経症と診
断されていたものですが、
精神症状として強い不安、イライラ感、恐怖感、緊張感が現れるほか、動悸、激し
い発汗、頭痛、胸痛、下痢、腹痛などといった身体症状として出る場合があります。
不安は本来、脅威や精神的ストレスに対する正常な反応であり、誰でも経験します。正常な不安は「危機的状
況」に基づいており、生き延びるための大切な機能として働いています。危機的状況に直面すると、本能的な
不安が発生し、それが向かうか退くかという緊急反応を誘発します。血流量が増えるなど体にさまざまな変化
も生じ、攻撃してくる対象から逃げる、あるいは攻撃者を撃退するといった対処に必要なエネルギーが身体に
供給されます。
ところが、不安が不適切な時や回数が多く生じる場合、あるいは日常生活に支障を来すほど不安が強く長く続
く場合には、不安症(障害)となります。不安障害の原因は完全にはわかっていませんが、不安障害が多発す
る家系もあることから、遺伝も一因となっているという考え方もあります。不安は、心理学的には、親密な関
係が破たんする・生命に危険が及ぶ・災害に遭遇するというストレスに対する反応とみられます。
たとえば、大勢の人の前で話をするのは楽しいと感じる人がいる反面、そのことを相当恐怖に感じて不安にな
り、発汗、振戦などの症状さえ現れる人もいます。
不安障害は催眠療法でも改善することがあります。たとえば結婚式のスピーチを頼まれて、「ちょっと恥ずか
しい」と感じるケースです。もっと症状が重くなると、催眠暗示がいつまでも効くことはありませんので、対
応は難しくなります。