周囲に「ロボットのような人」「感情のない人」はいませんか。アスペルガー症候群などの発達障害の方の多
くは感情表現が苦手だと申し上げていますが、似ているようですが別の概念で使用されている言葉もあります。
それがアレキシサイミア(失感情症)です。
アレキシサイミアとアレキシソミア(失体感症)
アレキシサイミアとアレキシソミアいう言葉をご存知でしょうか。和訳すれば、アレキシサイミア=失感情症・
アレキシソミア=失体感症となります。
アレキシサイミアは、さまざまな原因によって自分の感情に鈍感になってしまい、自分の気持ちを感じたり、
言葉で表現することが難しくなることをいいます。
最初にそのことを発見したのはアメリカの精神科医で、心身症の方に「何がつらいですか」と聞いたときに、
「別に」や「特に」というような返事が帰ってくることがあり、このような返答をするタイプの方には従来の
分析的な心理療法が行いにくいことなどから、別のアプローチが必要であると考えられました。
もう少し簡潔に説明すると「つらい」という表現が理解できない、「今の状態」=「つらい」という関連付け
を脳内で行うことができないということでしょうか。 失感情症とは、決して「ロボットのように感情がない」
というのではなく、自らの感情を自覚・認知したり表現することが不得意で、空想力・想像力に欠ける傾向の
ことを指します。
アレキシサイミアの具体的な症状は
★喜怒哀楽を感じにくい。(イライラするなど怒りの感情は出やすい)
★小説の主人公の気持ちにもなれないので推理小説や恋愛小説などはまったく楽しめない。
★涙は出るけれど、なぜ自分が泣いているのかが判然としない。
★自分がどう感じているのか表現できない。
★「愛情」が何なのか分からない。
★花を見てもきれいだと思わないし、そもそもキレイって何なのかも分かりにくい。
★周囲から見ると「無気力」にしか見えない。
★相手が迷惑そうなのは分かっても、どう対応すれば良いのかアイデアが出てこない。
などという状態が発生していますが、本人は気づかないことも多いようです。ご家族の方が気づいた場合は
精神科・心療内科・神経内科をまずお訪ねください。脳に異常がなければ当相談室で対応は可能です。
★自分自身の感情や、身体の感覚に気づくことが難しい。
★自己の内面へ眼を向けることが苦手。
★感情を表現することが難しい。(感情がないのではありません)
などがあげられます。原因ははっきりしていませんが、右大脳半球で何らかの機能障害があるという説もあり
ます。
アレキシソミアは自分の「身体の痛み」「しんどい」などの感覚に気づくことが難しくなることを指します。
アレキシサイミアの状況が長く続くと、今度はストレスが無い状態のことを忘れてしまい、ストレスがかかっ
た状態が普通となってしまうことがあります。「つらい、悲しい」という感情がうまく吐き出せずに自分の中
(脳内)にとどまってしまい、感情が出ない状態になります。
感情がないわけではありませんから、あまりに押し込められた感情は身体的な症状となって表出する場合があ
ります。頭痛・不眠・よく分からない痛み・しびれ・めまいなどです。病院に行って脳波やCT・MRIなど
の検査を受けても多くの場合異常は出ません。
ケガをした場合なども同様です。あまりに感覚がマヒしていて、痛みを感じないケースも報告されています。
このように、自分の身体にもかかわらず、異常に気づきにくい、自分のからだと向き合えない、という傾向を
アレキシソミアと呼んでいます。自分の身体と向き合えないのですから、かなり深刻だと考えてください。
「特に問題ありません」「フツウです」としか説明できない身体症状が続いている人達の背景に、このような
状況が隠されていることがあります。このような場合は、少しでも感情を表出できるように改善を図ることが
大切になってきます。
アレキシサイミアとミラーニューロン
ファミレスに入って席に座ると、一般的にはウエイターが水を持ってきてくれます。ところが、その行為が何
を意味するのか分からないと、
★自分で飲もうとしている。
★こちらに水を浴びせる。
★ひょっとして乾杯をしようとしている。
と思っているかもしれません。理解できなければ、怖くて店に入ることができませんね。
私たちが他者の行動を即時に理解できるのは「ミラーニューロン」のおかげだといわれています。脳内におい
て、目にした行為をあたかも自身のものであるかのように「共鳴する」運動神経細胞のことを指します。
この細胞がない(少ない)場合、実際に上記のようなことが起こり得るのです。アスペルガー症候群などでも
同様なのですが、「人をまねることができる」=「人のする行為が理解できる」ために安心して座っていられ
たり、早めに災害から避難することができます。
アレキシサイミアという症状は、この「まねる」行為が苦手になるということが中心です。他人が何かしてい
るのを見ても「○○してるんだ」とだけ感じるという状態です。自分がどうしようかという「回路」がないと
考えるとおおむね当てはまります。
ミュゼでは、コミュニケーションを通じてこの能力を強化していきます。